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福岡市西区下山門の産婦人科クリニック。吉永産婦人科医院です。

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医療情報Medical Information

医療情報 Medical Information

  • 2016.11.21 ピルの副作用心配再服用迷う  

    Q 4年前に子宮内膜症・卵巣嚢胞と診断され、ピル(保険適用)を2年間飲みました。
      症状が安定し、今は休薬中ですが、医師は服用継続を進めます。
      ピルは静脈血栓症などの副作用が報告されていて、再開を迷っています。(30歳女性)

    A 北村 邦夫 日本家族計画協会クリニック所長(東京都新宿区)

    子宮内膜症を原因とした卵巣嚢胞は「チョコレート嚢胞」と呼ばれます。
    腫瘤が比較的小さい、悪性でない、破裂や感染の危険性がないことが確認されれば、
    保険適用のあるピル(低用量エストロゲン、プロゲスチン配合薬)などの薬物治療が行われます。

    ピル服用による静脈血栓症が心配とのことですが、肥満、高齢、喫煙者、血栓症の家族歴がある、手術などで長時間、体を動かせないなどの該当しなければ、それほど心配するには及びません。ピル服用者は、服用していない女性に比べて血栓症発症率は年間約2倍になりますが、妊娠した場合はピル服用者の約2倍、産後12週目では約10倍で、妊娠の方がはるかに血栓症のリスクが高いのです。

    国連調査では、婚姻・同棲にある女性の避妊薬・ピルの使用率は、フランスやオランダでは40%超ですが、日本では筆者が調査したところ、3%にとどまっています。

    静脈血栓症の正しい知識を

    血栓症の兆候となるふくらはぎの痛み、息苦しさなどの症状を見逃さないよう正しい知識を持っていれば安全に安心して服用できます。医学的理由で服用禁止とならなければ、閉経まで飲み続けても問題はありません。

    ただし、チョコレート嚢胞から卵巣がんになる危険性は年齢とともに高まります。検査の結果、手術を選択することもあります。妊娠を望むか否かで治療法が変わるので、今後も主治医とよく相談してください。

    ※ 2016年11月20日(日曜日)付読売新聞「からだの質問箱」より引用
  • 2014.08.25 妊娠合併症に関する知識について

    HBV感染(B型肝炎ウイルス感染)

    《この感染やHBS抗原陽性の検査結果とは何を意味するのか》

    これは血液検査の結果でHBs抗原陽性の場合にはHBV感染と診断される。
    HBV感染が診断されたら、母子感染予防方法に基づき、出生児への感染を予防する。
    この方法はHBIGとHBワクチン投与法で、2013年10月に変更されている。

    B型肝炎は血液を介したHBVの感染により起こり、感染様式には「一過性感染」「持続感染」の2種類がある。
    最近は国際交流が盛んになり、成人期の感染であっても持続感染を起こす遺伝子型のHBV感染が増加し、急性肝炎発症後に10%位がキャリア(保因者)化している。

    次にHBe抗原肝機能検査を受け、母体の健康状態を確認する。
    HBe抗原は感染した肝細胞の中でHBVが増殖する際に過剰に作られ、血液中に流れ出るので、HBe抗原が陽性ということは、血中のHBV量が多く、感染力が強いことを意味する

    家族内感染についてはHBV感染は血液や性行為で感染し、HBV未感染者(HBs抗体陰 性者 )はB型肝炎ワクチン接種により感染が防げる
    HBe抗原陽性妊婦から出生した児は予防法をしない場合は80~90%がキャリア化する。
    他方、HBe抗原陰性の妊婦から出生した児はキャリアになることは殆どない。
    HBs抗原陽性率は約0.2~0.4%、HBs抗原陽性妊婦のHBe抗原陽性率は約25%である。通常、分娩時の母子感染であるが、胎内感染も5%以下みられる。

    《具体的には、どう対処したら良いのか》

    診断を受けると次に、HBe抗原と肝機能検査を行う
    自覚症状がなくても、肝臓専門医を受診する
    HBs抗原陽性の妊婦から出生した児のすべてが「B型肝炎母子感染防止対策」の対象である。 
    その内容は
    ①HBs抗原陽性妊婦のHBe抗原検査ならびに母子感染危険度の把握と妊婦の健康管理
    出生直後(12時間以内を目安)に2種類(HBIGとHBワクチン)を投与
     HBIG:抗HBsヒト免疫グロブリン HBワクチン:B型肝炎ワクチン
    生後1か月 HBワクチン
    生後6か月 HBワクチン
    生後9~12か月 児のHBs抗原検査、HBs抗体検査   
    ⑥HBS抗原陽性となった場合には予防措置が成功しなかったと判断する。
     HBs抗体陽性であれば予防措置は成功したと考えて良い。 
     もし、HBs抗体陰性もしくは低値であればHBワクチンの追加接種またはワクチンを替えて接種を行う。 
    ⑦出生児のフォローアップを小児科医に要請する場合には「HBVキャリア妊婦からの児」であることを明確に伝える
    母乳に関しては母乳栄養児と人工栄養児との間でキャリア化に差が認められないことより、母乳栄養を禁止する必要はない

    ※ 産婦人科診療ガイドライン産科編2014の抜粋と改編
  • 2013.03.12 緊急避妊について 

    緊急避妊の実際
    ① 中用量ピル(プラノバール)
      ヤッペ法と言い、避妊に失敗した性交後72時間以内に中用量ピルを2錠更に12時間後に2錠服用します。
      北村邦夫の2007年の報告では妊娠率は2.6%。
      副作用としては吐き気、嘔吐がしばしばみられます。その他に下腹痛、頭痛、体のだるさ、下痢も軽度あります。
      注意授乳中の場合、量的質的低下が起きることがあり、乳汁中へ移行します。
      慎重を期するならば服薬後24時間は授乳を避けます。

    ② ノルレボ錠
      経口剤を用いた緊急避妊の第一選択となります。
      72時間以内遅くても120時間以内に2錠1回内服します。ただし、72~120時間では妊娠阻止率が低下します。
      北村邦夫の報告では妊娠率は2.1%
      副作用は、ヤッペ法に比べて発現率が低いです。
      注意授乳中の場合、乳汁中に移行するので服薬後24時間は授乳を避けます。

    ③ 銅付加IUD
      性交後120時間以内に挿入します。未産婦の場合には挿入が困難であることがありますが、禁忌とはなりません。
      又、子宮内感染を疑われる場合には危険があり、不適当です。中長期の避妊を予定していない人には不向きです。
      しかし最も妊娠率が低いです。注意:金属アレルギーの人には不適です。

    以下の内容は、「2012.11.26  緊急避妊後の効果について」と同様の内容です。

    効果のある理由
    緊急避妊ピル(ノルレボ錠)では 
    十分に解明されていないけれど、その効果が着床障害よりも排卵抑制、あるいは排卵遅延によるものと考えられています。緊急避妊ピルを排卵前に使用すると、約80%の人ではその後5日以内の排卵が抑制されるか、あるいは排卵障害が起きます。即ち緊急避妊ピルを服用して5~7日間排卵が抑制されるので、その期間に侵入した精子はすべて受精能力が失われます。

    銅付加のIUD(子宮内避妊器具)では
    銅イオンによる精子の運動性に対する直接作用によって受精を除外すると知られています。
    さらに受精前及び受精後の両方に効果があることを示唆されてます。
    即ち受精が起こったとしても着床阻害作用の可能性があります。また精子の侵入が阻害されていることも考えられています。

    緊急避妊法を考える状況
    ・避妊をしない性交後 ・経口避妊薬の服用忘れ ・下痢 ・レイプや性的暴行後 ・腟外射精 
    ・コンドームの破損、脱落、不適的な使用 ・IUDの不適的な装着 ・月経周期が不規則で避妊をしない場合

    緊急避妊ピル服用後の注意
    80%以上の人に予定月経日の前または2日以内に月経があり、95%の人に予定月経日の7日後以内に月経があります。
    もし月経が予定より7日以上遅れたりあるいはいつもより月経量が少なかったり、月経日数が短い場合には妊娠検査を必ず行ってください

    銅付加IUDの使用時期
    銅付加IUDを挿入後直ちに効果がみられます。すでに受精が起きっている場合には受精卵の着床阻害作用があることが認められています。ただし、緊急避妊法として使用する場合には避妊を失敗後5日間以内に装着する必要があります
    銅付加IUDの使用は妊娠の失敗率が低く、そのまま避妊法として継続することができます。

    ※ 緊急避妊法の適正使用に関する方針(H23.2)より一部を引用し修正
  • 2012.12.17 妊娠とてんかんの合併症

    てんかん

    十分な配慮と適切な指導により安全な妊娠・出産が可能

    てんかんを有する女性は,妊娠や出産に対して不安を感じ,子供を持つことを諦める場合が多い。さらに,産婦人科医から出産を避けるよう勧められることもあるという。しかし,エアランゲン大学神経内科のHajo Hamer教授は「十分な注意を払い,医師が適切な指導を行えば,安全な妊娠,出産は可能である」とドイツ神経学会の第85回会議で報告。抗てんかん薬は,妊娠前から必要最低限の使用にとどめ,できる限り単剤投与するよう勧めた。

    リスクは過大評価されがち

    妊娠前のカウンセリングでは,妊娠,出産に伴う潜在的なリスクをただ列挙するだけでは意味がない。
    Hamer教授は「てんかん患者の妊娠は確かにリスクを伴う。妊娠中のてんかん発作は流産や死産の原因となりうる
    一方,薬剤の使用により奇形発生リスクが高まるが,そうしたリスクは,子供を持つことを諦めなければならないほど高くはない」と説明した。

    また,「てんかんは遺伝するのか」といった質問が多く寄せられることに対し,同教授は「てんかんは一部の種類を除き,遺伝しない」と述べた。ただし「てんかん発作の起こりやすさ」は遺伝し,非てんかん者の子供と比べ,てんかん患者の子供がてんかんを起こすリスクは約3倍高い。しかし,このリスクも子供を持つことを諦めなければならないほど高くはないという。このようなリスクの説明を十分に行い,患者の不安や疑問を解消しておく必要があるとした。

    妊娠初期の全般性強直間代発作の回避が重要

    また,妊娠前に抗痙攣薬の投与を継続する必要があるか否かを見極めることも重要である。とりわけ妊娠初期の全般性強直間代発作は胎児にとって危険であることが知られており,この発作の頻度が高ければ,子供の知能指数がわずかではあるが通常より低くなる可能性があることも示唆されている。そのため,薬物療法では全般性強直間代発作を予防することが最も重要となる。これまでのところ,他の種類の痙攣発作に関しては,まだ十分なデータがなく,重積状態を除いて,発作頻度の増加が胎児にとって危険であるとするデータは得られていない。

    通常,断薬するのは難しいため,Hamer教授は,まずは個々の患者で最も効果の高い抗てんかん薬の単剤投与を試みるよう勧めている。同教授は,妊娠によるてんかん発作頻度の変化について「適切な薬物療法を行うことができれば,患者の70%において妊娠中の発作頻度は変化せず,増加する患者は15%にとどまる」と述べた。

    ※ 2012年12月13日(VOL.45 NO.50)Medical Tribune記事より引用及び一部改変
  • 2012.11.26 緊急避妊後の効果について

    効果のある理由
    緊急避妊ピル(ノルレボ錠)では 
    十分に解明されていないけれど、その効果が着床障害よりも排卵抑制、あるいは排卵遅延によるものと考えられています。緊急避妊ピルを排卵前に使用すると、約80%の人ではその後5日以内の排卵が抑制されるか、あるいは排卵障害が起きます。即ち緊急避妊ピルを服用して5~7日間排卵が抑制されるので、その期間に侵入した精子はすべて受精能力が失われます。

    銅付加のIUD(子宮内避妊器具)では
    銅イオンによる精子の運動性に対する直接作用によって受精を除外すると知られています。
    さらに受精前及び受精後の両方に効果があることを示唆されてます。即ち受精が起こったとしても着床阻害作用の可能性があります。また精子の侵入が阻害されていることも考えられています。

    緊急避妊法を考える状況
    ・避妊をしない性交後 ・経口避妊薬の服用忘れ ・下痢 ・レイプや性的暴行後 ・腟外射精 
    ・コンドームの破損、脱落、不適的な使用 ・IUDの不適的な装着 ・月経周期が不規則で避妊をしない場合

    緊急避妊ピル服用後の注意
    80%以上の人に予定月経日の前または2日以内に月経があり、95%の人に予定月経日の7日後以内に月経があります。もし月経が予定より7日以上遅れたりあるいはいつもより月経量が少なかったり、月経日数が短い場合には妊娠検査を必ず行ってください

    銅付加IUDの使用時期
    銅付加IUDを挿入後直ちに効果がみられます。すでに受精が起きっている場合には受精卵の着床阻害作用があることが認められています。ただし、緊急避妊法として使用する場合には避妊を失敗後5日間以内に装着する必要があります。銅付加IUDの使用は妊娠の失敗率が低く、そのまま避妊法として継続することができます。

    ※ 緊急避妊法の適正使用に関する方針(H23.2)より一部を引用し修正
  • 2012.05.10 子宮がん検診に関して

    一次予防と二次予防
    子宮頸がんの主な原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の持続感染ですので、子宮頸がん予防には一次予防として子宮頸がん予防ワクチンの接種二次予防として子宮頸がん検診の受診が大変重要です。
     
    検診率
    任意のワクチン接種率は高いとは言えないし、検診率も現在では欧米各国では約70~80%であるのに対して、我が国はわずか23%程度です。それも、発症リスクが低い中高年女性の定期的な受診であり、発症リスクが高い20~30歳代の女性の受診率は数%に過ぎません。

    腺がんの怖さ
    更に、組織分類の腺がんが増加しています。現在は、子宮頸がんに占める割合は約23%になっています。
    このタイプは組織分類の扁平上皮がんに比べて放射線療法に対する治療抵抗性が見られ、予後が不良です。
    5年生存率は扁平上皮がんが78.7%に対して腺がんは72.9%であり、病期の進行と共にその差は拡大します。

    細胞診だけの検診の問題点
    扁平上皮がんは、目で確認できる子宮腟部に主に発生しますので、細胞診で前がん病変である異形成の細胞を高い確率で捉えられます。一方、腺がんは頸管に発生することが多く、細胞診で前がん病変を明確に捉えることが困難な場合が多いと考えられます。この為、腺がんは早期発見がしにくく、特に20~30歳代の女性では病変の進行が早く、周囲に浸潤していることが多く、再発等で予後不良の一因になって、死亡率も高くなっています

    HPV18型の高い悪性度
    腺がんでは、高リスクHPV16型、18型の検出率が高いのですが、18型が約40%で最も高く、次に16型となっています。死亡率が高い子宮頸部小細胞がんにおいても18型の検出率は高く、18型は非常に悪性度が高いと考えられています。

    HPV検査の重要性
    この検査は細胞診では早期発見が難しい腺がんや子宮頸部小細胞がんを早期発見するのに有用です。細胞診は現在の状態を、HPV検査は今後の予測を判断するのに役立ちます。その理由から、最近の子宮頸がん検診は細胞診とHPV検査の併用は精度が高いので、併用検診が次第に普及しています。医学的に見れば併用検診は30歳代~40歳代の女性に薦められます。

    ※HPV検査は任意検査になりますので、検査料金は自費で5000円+消費税です。
    ※予防ワクチンのサーバリックスは9.4年のデータではHPV16型と18型の感染を100%予防でき、20年以上有効な抗体価を持続して、終生免疫を獲得すると予測されています。

  • 2011.05.13 2歳時のミルク授乳継続で5.5歳時の肥満有病率は1.3倍に

    離乳児と比べ,6,750人対象の米研究

    米国の専門家らは,児童らに対する肥満対策は就学前に講じられるべきとの共通認識を示しているが,その効果的な具体策についてはエビデンスが不十分だという。
    米テンプル大学肥満研究・教育センターのRachel Gooze氏らが,2001年出生の6,750人を対象に研究を行ったところ,2歳時点でほ乳瓶による授乳(ミルク授乳)を継続していた児童の5.5歳時点での肥満有病率は22.9%であることが分かった。同年齢時にミルク授乳を既に終えていた児童と比べ,肥満有病率が約1.3倍高いことを示す結果となった。(JPediatr 5月5日オンライン版)

    ミルク授乳は就寝時のみでも常用でも肥満有病率に差はなし

    Gooze氏らは,Early Childhood Longitudinal Study, Birth Cohort(ECLS-B)のデータから,2001年に米国で出生した1万4,000人分を分析した。15歳未満の母親による出生や,9カ月以前の早産などのデータを除き,最終的に2歳時点でのミルク授乳についてインタビューができ,5.5歳時点の身長,体重が測定できた6,750人(男児3,400人,女児3,350人)を追跡調査対象とした。男女別の対年齢BMI比が95パーセンタイル以上に該当する児童を「肥満」と定義付けた。

    その結果,6,750人中,2歳時点でミルク授乳が継続していた児童は22.3%,5.5歳時点で肥満に分類された児童は17.6%だった。ミルク授乳児童のうち,18.9%が就寝時のみで,常用者は10.5%であった。

    続いて同氏らは,2歳時点でのミルク授乳の有無別に,5.5歳時点での肥満有病率を求めたところ,ミルク授乳児は22.9%(95%CI 19.4〜26.4%),離ミルク授乳児は16.1%(同14.9〜17.3%)だった。就寝時のみか常用かで肥満有病率に差は認められなかった。

    9カ月時点の体重や母親の肥満による差は認められず

    さらに,双生児,人種,収入などの社会人口学的特性,母体の健康状態,肥満に対する修正可能な行動,児童の以前の体重などの潜在的交絡変数を補正したミルク授乳児の肥満オッズ比(OR)は,離ミルク授乳児に比べ1.33(同1.05〜1.68)高かった。

    Gooze氏らは,“肥満体質がボトル授乳を継続する傾向がある”という逆の因果関係についても検討した。9カ月時点の対身長体重比(95パーセンタイル以上 vs. 95パーセンタイル未満)および母親の肥満(BMI 30未満 vs.30以上)についてクロス積演算により比較したところ,有意な差は認められなかった(データ未発表)。

    今回の研究により,2歳時点でミルク授乳を継続している児童が5.5歳時に肥満を有病する確率は,離ミルク授乳児童に比べ約1.3倍高いことが分かった。同氏らは「例えば,身長86cm,体重12kgの平均的な2歳女児の場合,就寝時に8オンス(150kcal)のミルクを与えることは,1日の必要摂取カロリー1,300kcalのおよそ12%に相当する」と指摘。親が子供に対する安心材料としてミルク授乳を続けている場合は特に,児童はカロリーを過剰摂取している可能性がある,と推測した。

    ※ 2011/05/11付 MT Pro記事より引用
  • 2011.03.29 母乳のみの授乳者では乳がん、子宮内膜がん罹患リスク低下

    東北大学大学院公衆衛生学分野の菅原由美氏らは,大崎国保コホート研究のデータを用いて,日本人女性における授乳方法と性ホルモン関連がん罹患リスクの関連性を検討し,人工栄養のみの授乳に比べて,母乳のみの授乳が,乳がんだけでなく子宮内膜がんの罹患リスクの低下にも寄与することを明らかにした。
    検討では,前向き研究である大崎国保コホート研究の対象者のうち,出産経験があり,授乳についての質問に回答した女性1万9,848人分のデータを解析した。
    解析対象は,授乳方法ごとに,人工栄養のみ,母乳と人工栄養,母乳のみの3群に分け,人工栄養のみ群を基準とし,他の群の性ホルモン関連がん罹患HRを多変量調整して算出した。なお,対象の追跡調査期間は,1995年1月1日~2005年12月31日とした。
    その結果,人工栄養のみ群における乳がん,子宮内膜がん罹患HRを1として比較すると,母乳と人工栄養群,母乳のみ群では,乳がん罹患と子宮内膜がん罹患は有意なリスク低下が認められた。
    一方,授乳方法と卵巣がん罹患リスクには関連が見られなかったという。

    ※ MTPro2011年3月の記事から一部修正して引用
  • 2010. 10. 2 体重増ほど乳がん高リスク 閉経後、女性2万人調査

    20歳の時より体重が増えた女性ほど、閉経後に乳がんを発症するリスクが高いとの研究結果を東北大の河合賢朗(かわい・まさあき)客員准教授(腫瘍(しゅよう)外科学)と南優子(みなみ・ゆうこ)教授らがまとめた。約2万人の女性を追跡調査した。閉経後に、肥満が乳がん発症リスクを高めることは分かっていたが、体重増加も関係すると判明。
    河合さんは「乳がん予防には、急激な体重増加を避けて、適正な体重を保つことが非常に大事だ」と話している。河合さんらは1990年、宮城県内に住む40~64歳の女性2万1183人を対象に健康状態や生活習慣を調査。その後、2003年までの約13年間にわたって追跡したところ、期間中に256人が乳がんを発症した。体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)を調査時点と20歳の時について計算。その間の体重の変化と乳がんとの関係についても調べた。調査時のBMIが高いほど閉経後の乳がん発症リスクが高く、20歳の時のBMIが高いほどリスクは低かった。20歳の時から調査時点までに体重の増加量が多いほど、閉経後に乳がんを発症するリスクが高かった。

    注)『m3.com 医療ニュース』から引用しています。  2010年9月24日 提供:共同通信社
  • 2010. 9. 4 流産後、次の妊娠までの間隔は短い方が転帰良好

    初回妊娠が流産に終わった場合、次の妊娠まで何カ月待てば転帰が最も良好になるのか。英Aberdeen大学のEleanor R Love氏らは、スコットランドの女性のデータを後ろ向きに調べて、間隔が短い方が流産や子宮外妊娠などのリスクは低いことを明らかにした。論文は、BMJ誌電子版に2010年8月5日に掲載された。一度流産すると、そうでない女性に比べ、次の妊娠も流産に終わるリスクが高まる。加えて、早産や誘発分娩、分娩後出血も生じやすくなる。WHOのガイドラインは、次の妊娠まで少なくとも6カ月待つことを推奨している。

    著者らは、初回妊娠が流産に終わった場合、どの程度待てば次の妊娠の転帰が最良になるのかを知るために、集団ベースの後ろ向きコホート研究を行った。スコットランド住民の健康情報を登録しているデータベースから情報を抽出。スコットランドの病院で1981~2000年に初回妊娠が流産に終わった女性の中から、条件を満たした3万937人を選んで分析した。

    主要エンドポイントは、2回目の妊娠における流産、生児出生、人工妊娠中絶、死産、子宮外妊娠に、2次評価指標は、帝王切開、早産(在胎36週未満)、低出生体重(2500g未満)、子癇前症、前置胎盤、胎盤早期剥離、誘発分娩などに設定。交絡因子として、出産時の母親の年齢、社会経済学的状況に関するデータを抽出し、それらを用いて調整しオッズ比を求めた。次の妊娠までの間隔が6カ月未満だったのは1万2744人(41.2%)、6カ月以上12カ月未満は7791人(25.2%)、12カ月以上18カ月未満は2958人(9.6%)、18カ月以上24カ月未満が1995人(6.4%)、24カ月超が5449人(17.6%)だった。

    2回目の妊娠で生児を得た女性の割合は、妊娠間隔が6カ月未満のグループが最高(85.2%)で、24カ月超のグループが最低(73.3%)だった(P<0.01)。人工妊娠中絶を経験した妊婦の割合も、6カ月未満群が最低(2.3%)、24カ月超群が最高(9.9%)だった。流産から6~12カ月後に妊娠した女性と比較して、6カ月以内に再妊娠した女性の流産リスクは有意に低く(調整オッズ比0.66、95%信頼区間0.55-0.77)、人工妊娠中絶(0.43、0.33-0.57)、子宮外妊娠(0.48、0.34-0.69)のリスクも低かった。

    逆に、24カ月以上たってから再妊娠した女性の場合には、子宮外妊娠(1.97、1.42-2.72)、人工妊娠中絶(2.40、1.91-3.01)のリスクが高かった。死産と妊娠間隔の間には関係は認められなかった。6~12カ月の間隔をおいて妊娠した女性と比較して、6カ月以内に妊娠し生児を得た女性では、帝王切開(0.90、0.83-0.98)、早産(0.89、0.81-0.98)、低出生体重児出産(0.84、0.71-0.89)のリスクが有意に低かったが、誘発分娩(1.08、0.81-0.98)は有意に多かった。

    妊娠間隔が24カ月超だった女性では、早産(1.21、1.07-1.36)、帝王切開(1.39、1.26-1.54)、低出生体重児出産(1.23、1.02-1.48)のリスクが高かった。転帰が最も良好だったのは流産から6カ月以内に妊娠した場合で、妊娠間隔が24カ月超になると転帰有害のリスクは高まることが示された。これらの結果は、流産後、次の妊娠まで一定期間待つ必要がないことを示唆した。

    注)『2010/08/25 海外論文ピックアップBMJ誌より』から引用しています。
  • 2010. 7. 29 糖尿病診断の最新知見について

    糖尿病の診断基準が改定されました
    ・日本糖尿病学会は11年ぶりに改訂して、2010年7月1日から適用しています。また、日本糖尿病学会は5月末に、1年後をめどに、診療や健康診断などの日常診療におけるHbA1c値の表記を、国際に使用されている相当値に変更します。7月1日から日本の糖尿病の診断基準にHbA1cが取り入れられ、つまり、従来の基準にHbA1c≧6.1%が追加されました。
    糖尿病の新診断基準
     ① 早朝空腹時血糖値 126mg/dl以上
     ② 75g糖負荷試験で2時間値 200mg/dl以上
     ③ 随時血糖値 200mg/dl以上
     ④ HbA1c値 6.1%以上

    診断では、血糖値(①空腹時血糖値 ②75g糖負荷試験2時間値 ③随時血糖値のいずれか)とHbA1cの両方を評価して、血糖値とHbA1cが共に診断基準を満たしている場合には1回の検査で糖尿病と診断されます。

    糖尿病の診断におけるブドウ糖負荷試験の有用性
    ・糖尿病の発症早期には、食後高血糖のみが現れることが多いです。OGTT(ブドウ糖負荷試験)は早期の糖尿病の診断に非常に有用です。空腹時血糖値が110~125mg/dL、随時血糖が140~199mg/dL、HbA1cが5.6~6.0%(JDS値)など、現在、糖尿病の疑いが否定できないグループは、OGTTを「強く推奨」としています。
    また、糖尿病でなくても、高血圧、脂質異常症、肥満など動脈硬化のリスクを持つ人は将来糖尿病になりやすいので、空腹時血糖値やHbA1cが上記の値以下でもOGTTを「行うことが望ましい」としています。
    さらに、HbA1cを診断に活用する際には、HbA1cが見かけ上、低値になる疾患などにも注意が必要です。
      HbA1cが見かけ上、低値になり得る疾患や状況
     ・ 溶血性貧血
     ・ 肝疾患
     ・ 透析
     ・ 大出血
     ・ 輸血
     ・ 慢性マラリア
     ・ 異常ヘモグロビン症など
               糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告により

    血清K低値は2型糖尿病発症の危険因
    ・血清カリウム(K)低値は、2型糖尿病の発症リスクを高める新たな独立した危険因子であることが人間ドックを受診した健常者を対象とした大規模観察研究で明らかになりました。筑波大学内分泌代謝・糖尿病内科の平安座依子氏が発表しました。
    健常者を対象とした少数例の検討で、低K血症はインスリン分泌を低下させ、耐糖能障害の原因となる可能性が推定されています。また、高血圧患者では利尿薬服用によって起こる低K血症が耐糖能障害と強く関連し、血清K値の低下が糖尿病発症リスクを増加させることも示されています。
    4.0mEq/L未満の血清K低値は糖尿病発症の相対リスクが有意に高い結果でした。

     注)日経メディカル 2010年7月号から引用しています。
  • 2010. 6. 3 妊娠中のHTLV-1検査(成人T細胞白血病の診断検査)について

    ・HTLV-1の母子感染について、平成21年度厚生労働科学特別研究事業(HTLV-1の母子感染予防に関する研究班:研究代表者齋藤滋富山大学教授)の研究報告書がまとめられました。
    ・一次検査(PA法、CLEIA法)で陽性となっても、確認検査(Western blot法)が必要です。
     その理由は、偽陽性率が少なからずあるためです。
    ・確認試験をしても約20%が判定保留となります。
    ・一次検査・確認検査で検査陽性の場合、母乳哺育をしても安全です。
    ・判定保留の場合、保険適用されていませんが、PCR法で確認することもできます。(自費)
    ・陽性の場合、4ヶ月以上の母乳哺育で母子感染率は約20%となります。人工乳にすると約3%の感染率となります。症例数は十分ではありませんが、3ヶ月以下の短期母乳や凍結解凍母乳哺育での母子感染率は人工乳とほぼ同じです。

    注)社団法人日本産婦人科医会母子保健部の2010年5月公示から引用しています。
  • 2010. 5. 31 子宮頸がん検査とHPV(ヒトパピローマウィルス)検査

    ・高リスク(悪性化が高い)HPVの陽性率は、軽度異形性75~85%、中等度および高度異形性80~100%、上皮内がんおよび浸潤癌ではほぼ100%です。
     子宮頚部腺癌(悪性度が高く難治性)でも約90%に検出されます。
    ・子宮頸部細胞診検査は、死亡率減少効果に対して十分な根拠のある精度の高い診断法です。
     しかし、細胞診の特徴として特異度は高いが、感度は低いという問題点があります。
    細胞診のみでは取りこぼしが出てくる可能性があります。そこでHPV検査を組み入れることで効率的に検診を行おうという取り組みが世界的に行われています。
    日本でも2010年4月より細胞診で軽度扁平上皮内病変疑い或いはクラスⅢaと判定された人に対してHPV検査が保険承認されました。
    ・当院では厚生労働省に登録して保険でHPV検査が行えます。

    注)『日本産婦人科学会雑誌 研修コーナー2010年5月号』から引用しています。
  • 2010. 3. 29 子宮頸がん予防ワクチンについて最近の知見

    接種推奨対象について

    第一の接種推奨対象:11歳から14歳の女児
    ・HPVは主に性行為によって感染しますが、初回性交後短時間で感染するリスクが高いため、ワクチン接種は初回性交前に行われるのが理想です。
    ・9~15歳の女性を対象とした海外及び国内の臨床試験により、安全性と、高い抗体価が得られることが証明されています。
    ・中学3年生までは概ね10%以下であるのに対して、高校生になると20%以上に増加する傾向が見られます。
     したがって、性交経験者が増加する前の中学生までにHPVワクチンを接種することが効率が良いため、11~14歳の女児を第一の接種対象として推奨されます。

    第二の接種推奨対象:15歳から45歳までの女性
    ・15歳以上の女性に対しても、HPVワクチン接種は推奨されます。 また、すでに性交経験のある女性においては、ワクチンに含まれるいずれかのHPV型に感染している可能性はあるものの、ワクチンに含まれる未感染のHPV型による疾患の予防効果が得られます。
    ・わが国の臨床試験で20~25歳の一般女性において、HPV16型あるいはHPV18型のいずれかの型が感染していた頻度は10%でした。また、HPVに感染したとしても多くの場合は細胞性免疫により排除されるため、次の感染予防という観点から接種意義は十分あると考えられます。
    ・海外の臨床試験では45歳までの女性に対して有効性が示されております。

    特別な状況における接種について

    他のワクチン製剤との接種間隔
    ・使用添付書では、生ワクチンの接種を受けたものは、通常、27日以上間隔をおくこと、また他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常6日以上間隔をおいて本剤を接種すること、とされています。

    細胞診に異常所見またHPV感染が見られる女性への接種
    ・細胞診異常、HPV陽性、尖圭コンジローマの既往のある女性への接種については、HPVワクチンに含まれる全ての型に感染している可能性は低いため、感染していないHPV型による疾患の予防の目的としてワクチン接種は十分意義があると考えられます。もし、HPVワクチンに含まれるHPVに感染していたとしても、副反応が増強したり、病変が進行することはありません。

    妊婦、産婦への接種
    ・臨床試験においては、妊婦に接種した場合でも自然流産、奇形の発生率は、対照群、あるいは自然発生群と比較して有意な違いは見られていません。
    しかし、現在のところデータが十分ではないため、妊婦または妊娠している可能性がある女性への接種は妊娠終了まで延期することが望ましいです。接種がはじまっている妊婦については分娩終了後まで待って残りの接種を行います。ワクチン終了後に妊娠が判明した場合に人工妊娠中絶をする必要はありません。

    授乳婦への接種
    ・授乳婦への接種については安全性が確立していないので、ワクチン接種の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ接種します。なお、米国の添付書においては接種可能とされています。

    免疫不全患者への接種
    ・過去に免疫不全の診断がなされているもの及び先天性免疫不全症の近親者がいる女性は、健康状態及び体質を勘案し、接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種する。

    ワクチン接種後も子宮頸がん検診が重要
    ・本ワクチン接種は、定期的な子宮頸がん検診に代わるものではありません。ワクチン接種を行った後も定期的な子宮頸がん検診を受けるべきです。HPV16型及び18型に起因する子宮頸がんは本邦では全体の約60~70%であり、ワクチンの接種を受けた女性でも予防できないハイリスク型HPVに感染するリスクがあります。18型は、16型より悪性化させる確率が高いと言われています。
    また、性行為のある女性においては、ワクチン接種時にすでにHPV16型、あるいは18型に感染している可能性があります。

    注)社団法人日本産婦人科医会 子宮頸がん予防ワクチン接種の手引きから引用しています。
  • 2010. 2. 5 ホルモン薬による緊急避妊法について

    ホルモン薬による緊急避妊法について
    実際の薬の飲み方は72時間以内に1回目の中用量ピル2錠を服用し、その12時間後に中用量ピル2錠を服用します。服用後3日~3週間程度でまとまった量の出血が起こって子宮内膜が一掃されれば、緊急避妊は成功となります。
    但し、時期によっては(黄体期に入ってから)、すぐに消退出血(生理)が来ないことがあります。
    消退出血(生理)の時期は1週間後のこともありますし、通常の生理の時期までないこともあります。
    24時間以内の服用で 95%、72時間以内の服用全体では75%の妊娠回避効果があると言われています。
    効果は落ちますが、100~120時間くらいまでは一定の効果が得られるという調査もあるので、必要に迫られた場合は試みる値打ちがあると考えられます。なお、モーニングアフターピルは体内ホルモン濃度の急上昇→急降下による落差で消退性出血を導く方法です。
    ・また、緊急避妊法実施後の排卵は、予測がつかないので、自然の生理が来るまで確実に避妊することをお勧めします。
    ・モーニングアフターピルは、あくまでも緊急避妊法です。ホルモンの量は多くなりますので、身体への負担もかかります。普段は、確実な避妊法(低用量ピルなど)を行うようにしてください。
  • 2010. 2. 4 日本で認められた最新の避妊方法について

    避妊の確率が高くて推奨する方法を選び、紹介致します。

     避妊法
    1) IUD(子宮内避妊器具 intrauterine contraceptive devices)
    第2世代、銅付加IUD
    商品名:マルチロードCU250R
    ・長さ35mm、最大幅18mm
    ・本体:高密度ポリウレタン/エチレン・酢酸ビニル共重合体/硫酸バリウム、銅(純度99.99%以上)
    ・尾部:ナイロン6、色素(青色)
    挿入期間は2年間です。  
                  
    <装着時図>
    注)日本オルガノン株式会社の資料を修正して使用しています。
      この器具は現在生産中止になっております。


    商品名:ノバT380mg
    ・本体:ポリエチレン、硫酸バリウム、銀芯銅線 [銅(純度99.99%以上)、銀(純度99.95%以上)]
    ・除去糸:ポリエチレン、黒酸化鉄
    ・本体の形状は、白色の柔軟性のあるT型フレームの垂直軸に、銀を芯とした銅線(銅表面積として380m㎡)を巻き付け、垂直軸下端に
     褐色の除去糸を取り付けた銅付加IUDです。
    挿入期間は5年間です。
                  

    緊急避妊としての利用
    ・IUDは緊急避妊法としても利用できます。避妊をしなかった後5日(120時間)までは避妊できます。
    ・あるいはコンドームを使用したが、破損して、避妊に失敗したと思われたときにIUDは有効です。
    銅付加IUDは後半で紹介しますホルモン薬(モーニング・アフタアーピル)による緊急避妊法より効果的で、99%以上の避妊率と言われています。

    2)非金属付加IUD
    商品名:FD-1(エフディーワン)
    ・FD-1は、昭和52年に日本で初めて医療用具として承認された、テール付きのIUDで、下図のような葉っぱの芯(魚の骨?)状の独特な形状をしています。
    ・この特徴ある形で大きさを必要最小限に抑え、左右4対の羽が子宮の収縮運動により、自然に上方へ押し上げられ、自然脱落を少なくしています。
    ・新型挿入器(ポール型)でのデータは、メーカーで行った臨床試験ではありませんが、小山市民病院での10年間のデータ *2 があり、1年目の妊娠率は0.7%でした。
    金属アレルギーの人に適しています。
    挿入期間は約4年です。

     *1 :100婦人年とは、100人の女性が1年間使用したときの、妊娠すると予想されるパーセントです。
     *2 :石浜淳美先生「FD-110年間の成績」より

                    

    3)IUS(子宮内避妊システム intrauterine system)
    第3世代、黄体ホルモン付加IUD
    商品名:ミレーナ52mg
    ・子宮内に挿入する避妊器具に、医薬品であるレボノルゲストレル(黄体ホルモン)を組み合わせた、新しいタイプの子宮内避妊器具です。
    ・T型フレームの垂直軸に白色円筒状の内容薬剤を取り付け、この内容薬剤の部分を半透明の剤皮で覆ったものです。
    ・このT型フレームは白色で,垂直軸の上端が2 本の弓状のアームとなっており、垂直軸の下端はループになっています。
     このループには除去糸が取り付けられています。
    ・使用により月経時の出血量が減少することが特徴の一つです。
     このため、従来のIUDは過多月経の女性には使用できなかったが、ミレーナでは使用可能です。
    ・本器具は、既に世界111カ国で承認されています。
    臨床成績としては
     - 国内臨床試験においては1年間で482例中2例の妊娠が報告されました。
     - また海外臨床試験での5年目までの妊娠率は100婦人年あたり0.14と報告されています。
    避妊の仕組み
     - ミレーナから放出された黄体ホルモンは子宮内で局所的な黄体ホルモン様作用を示します。
     - 子宮内膜における高濃度の黄体ホルモンであるレボノルゲストレルは子宮腺の萎縮や間質の脱落膜化などの形態変化をもたらし妊娠の成立を阻害します。
     - この作用には本剤の局所的な異物反応も寄与しています。
     - また、子宮頸管粘液の粘性を高めて精子の通過を阻止します。
     - ミレーナの主たる作用は子宮内膜への局所作用であるが、一部の女性では排卵が抑制されます。
    その他の注意としては
     - 付加の黄体ホルモンは母乳中への移行が報告されているため、授乳中の人には第一選択の避妊法としません。
    挿入期間は5年間です。
    ・ミレーナを使用中に子宮内に妊娠した場合
    -原則として、本器具を除去します。(使用者には本器具の除去や子宮ゾンデ診は自然流産に至ることがあります。)
    -あるいは妊娠の中断も考慮します。
    -また、黄体ホルモン剤の使用と先天異常児出産との因果関係について、いまだ確立されたものではないものの心臓・四肢等の先天異常児を出産した
    母親では、対照群に比して妊娠初期に黄体又は黄体・卵胞ホルモン剤を使用していた率に有意差があるとする疫学調査の結果が報告されています。
                  
    注)ノバT及びミレーナはバイエル薬品株式会社の資料を修正して使用しています。

    IUD及びIUSの特徴
    手術・麻酔は不要です。
    ・マルチロードの避妊効果は国内のある試験では708例中4例(0.56%)が妊娠しています。
    ・ノバTは海外の臨床試験において5 年目のパール指数(女性100人が1年間、その避妊法を使用した場合の妊娠率)は0.55でありました。
    ・ミレーナは海外での臨床試験結果から装着5年目までのパール指数は、0.14と高い避妊効果が確認されています。
    出産未経験者は原則的には不適当です。
    ・効果はピルについで高く,安全性も高いです。継続性があり、女性の意志のみで使用でき、全身的影響がありません。

    避妊機序について
    ・IUD の避妊機序は他の避妊法の作用機序のように明確ではありません。
    ・受精卵の子宮内膜への着床を阻止して妊娠を防ぐことは動物実験等で確認されています。
    ・IUDが挿入された子宮内膜の間質内には多数の食細胞の浸潤が認められ、着床に関係する酵素系の活性変化も認められています。
    銅付加IUD の場合,子宮内膜の酵素系には亜鉛イオンが補酵素として必要であるが、その活性が銅イオンによって阻害されて着床を
     阻害するという説が有力です。

    ・ミレーナはプロゲスチン製剤のレボノルゲストレルを子宮内に徐々に放出する仕組みが組み込まれています。一定の割合で放出されるレボノルゲストレルが子宮内膜に作用するとともに、子宮頸管粘液の粘性を高めて精子の通過を阻止することで、妊娠の成立を阻害します。避妊効果は、1回の装着で5年間、持続することが確認されています。

     禁忌・禁止 
    1. 妊娠中又は妊娠の疑いのある人[流産の危険性が増加するおそれがある。]
    2. 過多月経、その他の機能性出血を繰り返す人[出血を増悪するおそれがある。]
    3. 子宮の悪性腫瘍がある人[出血及び下腹部痛等が起こるおそれがある。]
    4 .子宮筋腫がある人[装着が困難になる場合や出血及び下腹部痛等が起こるおそれがある。]
    5. 子宮発育不全、子宮奇形、著しい子宮位置異常、強度の前屈・後屈及び頸管無力症のある人
     [装着が困難になる場合や出血及び下腹部痛等の副作用並びに脱出が起こるおそれがある。]
    6. 付属器炎、子宮内膜炎、急性又は亜急性頸管炎のある人[症状が増悪するおそれがある。]
    7. 骨盤内炎症性疾患(PID)あるいはPID治癒後2ヵ月未満の人
     [「【使用上の注意】有害事象 重大な有害事象」の項参照]
    8. 過去3ヵ月以内に感染性流産を経験した人[感染しやすくなるおそれがある。]
    9. 子宮外妊娠の既往歴又は子宮外妊娠の素因のある人
     [子宮外妊娠を含めた異常妊娠が起こるおそれがある。]
    10. 出血性素因のある人[出血を惹起するおそれがある。]
    11. 銅アレルギー及び銅代謝異常(Wilson病)のある人[症状が増悪するおそれがある。]
    12. IUD装着時又は頸管拡張時に失神、徐脈等の迷走神経反射を起こしたことがある人と
     [本品の装着および除去に際して迷走神経反射を起こすおそれがある。]
    13. 性器感染症(カンジダ症を除く)にかかっている人[PIDのリスクが上昇するおそれがある。]
    14. 過去12ヵ月間に性感染症(細菌性腟炎、カンジダ症、再発性ヘルペスウイルス感染、B型肝炎、
     サイトメガロウイルス感染を除く)にかかった人[PIDのリスクが上昇するおそれがある。]
    15. 産婦人科領域外であっても重篤な疾患のある人[装着禁忌と考えられる症状がある場合がある。]

    装着時期
    通常は生理が開始して7日目以内の排卵前が適当です。
    帝王切開後は、出産後12週を過ぎてから装着できます。
    お産後は子宮の回復する6~8週間以後が適当です。
    妊娠初期の流産または初期の人工妊娠中絶の場合は、直後に装着できることもあります。

    定期検診
    ・装着後の初回月経後、3ヵ月、6ヵ月及び1年後に必ず、超音波等により本品の位置の確認並びに脱出及び穿孔の有無の確認等を行います。
    ・ また、1年以上の装着を行う場合は、以後6ヵ月に1度は来院して、超音波等により器具の位置の確認等を行います。
    ・ 更に、1年に1度、子宮の細胞診を含めた諸検査を実施します。

    注)各製品の添付文書を一部修正して使用しています。

    MRI検査時の注意
    MRI検査時は、金属を装着しないようになっていますが、銀付加のIUDに関しては装着のまま検査を受けても問題はないと考えられています。(器具のメーカーに確認済み)
    ・実際にマルチロードやノバTは磁石で吸着されませんので磁気に影響されないと考えます。
    メーカーへの報告には検査に支障のない程度の熱感がみられたとの影響があります。
    念のため、MRI検査の際は、銅付加のIUDを装着していることを申告してください。

     料金について

    第2世代のノバT380mgでは手技料及び薬代を含めて44,000円(税込)になります。
    ・避妊を失敗して手術をするのと比較すれば身体の健康と費用の面から考えると高いとはいえないでしょう。
    ・非金属付加IUDのFD-1は、31,000円(税込)です。
    第3世代のミレーナ52mgは高価になります。53,000円(税込)です。
  • 2010. 1. 22 子宮頸がん予防ワクチンの特性について内容を追加

     このワクチンの特性は
    ・HPVのDNAを含まないため、感染することはありません。非感染性の組換ワクチンです。
    ・サーバリックスにより誘導された血清中抗HPV IgG抗体が子宮頚部粘膜に滲出し、子宮頚部の主要原因であるがん発生の危険性の高いHPVの
     持続的な感染を予防していると考えられています。
    ・サーバリックスを接種してもすべての発がん性HPVの感染を予防できるわけではありません。
     しかし、特に子宮頸がんから多く見つかるHPV16型、18型の2つのタイプの発がん性HPVの感染を防ぐことができます。
    ・サーバリックスで予防できない子宮頸がんは、これまで通り、検診により予防する必要があります
    妊婦または妊娠している可能性のある婦人への接種は 妊娠終了まで延期することが望ましいです。
     妊娠中の接種に関する有効性及び安全性は確立していません。
    ・授乳中の接種に関す安全性は確立していませんので、予防接種の上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ接種します
     動物実験では抗HPV-16抗体あるいは抗HPV-18抗体が授乳中に移行することが報告されています。

     注) グラクソ・スミスクライン株式会社の資料の抜粋及び添付文書を一部修正しています。
  • 2009.12.15 子宮頸がん予防ワクチン発売

     当院で子宮頸がん予防ワクチン接種が可能になりました。
     1回接種の料金は16,200円(税込)になります。全部で3回接種で料金は48,600円(税込)になります。
     これは追加免疫を高めるためですので是非3回必要とします。
     お気軽にお問い合わせください。

     日本で初めての子宮頸がん予防ワクチンが発売されます。
     (グラクソ・スミスクライン株式会社のサーバリックスという名前で、2009年12月22日に発売されます。)


    このワクチンの特性は
    ・子宮頸がん発症の主要な原因である、発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)の16型と18型の感染を予防するワクチンです。
    ・自然感染の11倍の抗体価(免疫力)を長期間維持します。
    ・HPV16型と18型の持続感染、HPV16型もしくは18型が関与する前がん病変の発症を92.3~100%予防します。 
     注) 全子宮頸がんの発生予防%ではありません。
    ・10歳以上の女性が接種対象です。通常、0、1、6か月後に3回、上腕三角筋部に筋肉内接種します。
    ・3回接種により、自然感染時と比較して十分に高い抗体価が少なくとも20年間維持されることが推計されました。

    子宮頸がんの最近の国内臨床データでは
    ・子宮頸がんは、婦人科領域のがんの中で乳がんに次いで発症率が高く、20~30代の女性では最も発生率の高いがんです。
    ・子宮頸がんの死亡率は20~30代の女性では第2位です。
    ・発がん性HPVの感染が持続すると、そのごく一部が浸潤がんへ進行すると考えられています。
    ・HPV16やHPV18に感染していると、子宮頸がんの前がん病変である高度異形成の発生率が高まります。
    ・HPV16, 18は全ての年齢層の患者から検出されますが、20~30代の女性は検出率が80~90%と特に高くなっています。
    ・組織分類では腺がんの割合の増加が指摘されています。腺がんは難治性であるので、子宮の温存が困難です。

    注) グラクソ・スミスクライン株式会社の資料の抜粋及び添付文書を一部修正しています。
     注) この後追加承認されたガーダシルについては、こちら

    子宮頸がん予防ワクチンに関する情報サイト (グラクソ・スミスクライン株式会社)
    子宮頸がん含む一般的がんに関する情報サイト (国立がんセンターがん対策情報センター)


Yoshinaga Ladies Clinic吉永産婦人科医院

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